ホラノ貝大滝アイスクライミング~プロジェクト・ドラゴンダイブ最終章~

ホラノ貝大滝アイスクライミング~プロジェクト・ドラゴンダイブ最終章~

奥秩父でアイスクライミング

これまでのあらすじ

奥秩父大洞川井戸沢椹谷ホラノ貝窪〜プロジェクト・ドラゴンダイブ〜」をまだ読んでいない方は是非読んでほしい。

この企画は、飛龍山の北面にあるホラノ貝大滝が冬季に凍ったらアイスクライミングできそうだな、という不確かな推測と自信から生まれたものである。これまでの冬期登攀記録はなく、そもそも冬期の滝の状態に関する情報もなく、本当に凍っているのかどうかさえ怪しい状況であった。

そんな好奇心と行動力だけが取り柄の我々の行動記録である。

参加者

ゴリラ(リーダー)、マチャアキ、隊長、デクノ(記)

今回の獲物(目的)

今回我々が登攀目標としているホラノ貝大滝は、山梨百名山として有名な飛龍山(別名大洞山、標高2069m)の北面にあることから、プロジェクト・ドラゴンダイブと命名し、チーム発足当初から企画していたものである。

誰も存在を確認したことがない氷瀑と言うのは、実にロマンがあり、滝という字面からもドラゴンを連想したことは言うまでもない。(中二病)

そのため、今回はアイスクライミングの難易度云々という物差しでこの登攀の価値を決めるつもりはない。その姿を確認することに意義があると感じていた。そして、あわよくばアイスクライミングしたい。果たしてどうなるのか。

山行記録

日付

2023年2月18日〜19日

アプローチ〜ビバークポイントへ

事前調査では、日帰り登攀は非常に厳しいと判断し、山中ビバークし、2日かけて登攀する計画に決まった。

1日目は天候晴れ。昼過ぎに集まり、2人ずつのグループに分かれて奥多摩へ車を走らせた。ゴリーダー&デクノ組は、途中で忘れ物に気付き、2時間遅れでの入山開始となった。日没後、ヘッデンを付けながら歩き、ビバークポイントに到着した。ビバーク用のテント1式は、チーム随一のクレイジーボーイ・マチャアキが背負ってくれた。そんなマチャアキの若き日の淡い性体験を肴にその夜は大いに盛り上がった。

暗闇と雨と寒さ

約3時間の睡眠時間を確保していたが、デクノは寒くてあまり眠れなかった。凍えるような寒さの深夜1時に起床。暗闇の中、準備してすぐに行動開始。

序盤は登山道ではあるが、約800m程の標高を一気に上がる。重い装備と急登で息が上がる。身体障害者であるゴリーダーも必死で歩みを進めている。まるで縦走登山しているみたいだ。道中では危険な崩落地帯があり、マチャアキが先行して、古びた補助用のワイヤーを補修してくれたり、地味なサポートに助けられた。

途中から天候が悪化し、雨に近い雪も降り出した。いや、もうこれは雨だろう。ただでさえ寒いのに身体が濡れてしまい、最悪だ。あれ、目から水が…。いやいや、辛くても泣いている場合じゃないぞ。

下降ポイント〜椹谷へ

ようやく稜線に着いて、一息入れる。少し遅れてゴリーダーも到着し、下降ポイントへ。

ここからは踏み跡もないバリエーションルートとなるが、以前調査に来た甲斐あって、迷わずに降りて行ける。足場は非常に悪いが、ロープを出すほどの危険箇所はなく、沢沿いに着く頃には空もすっかり明るくなってきた。

沢沿いは雪が深く、水も流れており、この時はまだ滝が凍っているかどうか確証もなく、ダメかも知れないと思いはじめていた。コンディション的には、さすがに厳しいか。

滝の落口まで来て、ようやく氷結が確認できた。上部は奥秩父らしいグズグズのクソ氷ではあるが、とりあえず全容を確認するために懸垂下降で降りてみた。

氷瀑とのご対面

ようやく姿を現した大滝は、見事に氷結していた。これなら登攀できそうだ。

しかし氷瀑の登攀開始ポイントにたどり着くためには、滝つぼに落ちずに向こう岸でたどり着く必要がある。

先日、ゴリーダーが釜に落ちたシーンが皆の脳裏によぎる。なるほど、ここでもう一度ダイブ。そう、ドラゴンダイブだ。しょうもない伏線回収を期待するかと思いきや、先導したゴリーダーは慎重にへつり、釜に落ちることなく向こう岸へ渡り切った。

(ここで釜に落ちたら凄まじいリスク)

エンジョイ!アイスクライミング

大滝は傾斜はそれほどキツイわけではなく、60mロープで2P程のスケール。ゴリーダー&隊長ペアが先に登攀。続いてマチャアキ&デクノの順に登攀した。

難易度的には初心者向けと言っても良いレベルではあるが、一応奥秩父らしいクソ氷ではあり、人が踏み入れることのない領域のため、格別の美しさを堪能できた。

ここまで雨の中、ずぶ濡れになっており、ひたすら寒かったが、無事に登攀できた喜びを全員で分かち合った。

帰還までの長旅

昼前には登攀が終わり、帰りはもちろん来た道を引き返す。急登の登り返しが非常に疲れた。登り切った頃には、空も泣き止んでいて、やっと山が笑顔になってくれたような気がした。

ビバークポイントに戻ってからテントや寝具を急いで片付けて、夜逃げするかのような大荷物で山を下った。帰りの林道は、自転車を活用したので、かなりスムーズに下山できた。文明の力、最高。

終わりに

半分ノリで始まったような今回のプロジェクトであったが、実際に氷瀑を見つけて登ることができたことは我々にとって大きな成果となった。

そして数ヶ月後、飛龍山にハイキングに訪れたデクノ。やっぱり晴れた山が一番いいね。

END