ついに成し遂げた「一ノ倉沢クレバス」登攀!

ついに成し遂げた「一ノ倉沢クレバス」登攀!

念願の「一ノ倉クレバス」登攀 

【フィールド情報】

群馬県利根郡みなかみ町 谷川岳一ノ倉

「一ノ倉沢クレバス」

グレード:???

※全てにおいて情報は不明。廣川健太郎の著書「新版アイスクライミング全国版」富士山サミットフォールの一文に「谷川岳一ノ倉沢クレバスを除くともっとも遅い時期に登れるルート」 という記載がある程度。

【活動記録】

令和4年6月21日(火)

天候:晴れ

気温:19℃くらい

メンバー:隊長(吉田)、ゴリーダー(橋本)、まちゃあき(Zaki)

奥多摩・奥秩父アックス登攀部隊の通称「部活」

廣川健太郎の著書「新版アイスクライミング全国版」の最後の方のページ・富士山サミットフォールの一文に「谷川岳一ノ倉沢クレバスを除くともっとも遅い時期に登れるルート」 という記載があるんです。 たったこの一文から始まったプロジェクト。

今回は、念願の登攀編。

長かった…ここまで来るのに、どれほどの時間を費やしたか。

温めていた計画が故に、いざ登攀となると何とも感慨深いものがありました。筆者の感想はさておき。

この日は、天気も良く気温も安定していて、午前から午後にかけてピーカンの真夏日の予報。

絶好の登攀日和でした。しかし、好天過ぎるのもアイスクライミングにとっては危険因子が増えてしまうので、早朝行動・迅速登攀・早期撤退を念頭に活動しました。今回も、一ノ倉沢出合いまではチャリーズエンジェルで向かいます。

「オイ~ッス、早くしろい!」と朝からいつものテンションの隊長です(笑)

突如現れたタンクトップの人…
こんな朝っぱらの林道に「タンクトップでチャリの人?」思いましたが、よく見たらゴリーダーでした。
今回も登山指導センターの人は、我々の活動を引き留める事はありませんでした…
数日前に、一ノ倉沢烏帽子岩南稜で事故があったんですけどね。ご冥福を祈りながら気を引き締めます。
一ノ倉出合いに到着。ここで冬期仕様の戦闘準備です。平日なのに一般客の人が結構いました。
タンクトップの登山者が一番印象的でしたね。
まだまだ一ノ倉の雪渓は生きていますが、上部から下りてくる溜まった冷気と夏のもわ~っとした生暖かい空気が入交り、妙な空気と雰囲気が漂っていました。
所々に陽炎もみられ、まるでオホーツク海気団と小笠原気団の拮抗(梅雨前線)を彷彿させ、一ノ倉沢の雪渓も「もうそろそろ終息かなぁ…」という情景でした。
テールリッジ下部付近までは、各自のペースで詰め上げていきます。
この日は、烏帽子岩南陵に行くパーティーが一組いました。数日前に事故が起こっても、その辺は気にしないのでしょうかね。閑散とした一ノ倉沢には、足音だけが無常に響きわたっていました。
ヒョングリ滝付近。雪渓に馬糞みたいな泥や草が入交り、正直汚い…
この泥等が、色々な所に引っ付いたり・絡んだり・入り込んだりで、しかもなかなか取りにくくって、まぁー道具の掃除が大変なんですよ。
二ノ沢のクレバス。ぽっかり穴が開き、底が見えてしまっていますね。シンセンのコルあたりは草木がボーボー…これじゃ、無雪期の東尾根は行く気になれませんね。
この付近から傾斜が上がって来るので、小休止し待機圏へ突入。ゴリーダーの合流を待ちます。
ゴリーダーをボディビレイするマチャアキ隊員。
傾斜が強まるので、以前の怪我で足枷がついてしまったゴリーダー安全第一にアプローチしてもらいました。
現場に到着し、微笑むゴリーダー。
さぁ、いよいよ念願の「一ノ倉沢クレバス」の登攀へ移ります。
(DMM製デットマンでウォーズマンの図)
と思ったら、何を思ったのか隊長「見ーや、ウォーズマン。フハハハハハー!」
「タワーブリッジ!!」
もう、現場は爆笑の渦。登攀どころではなくなってしまいました(笑)
※隊長の乳首にも注目。
しかし、流石に年齢と行動を吟味したのか、行った愚行の羞恥心に屈したのか再びデットマンを装着。
入れる穴がないので仮面で逃げました。(仮面の下はどんな表情しているんでしょうねw)
DMM製デットマンは現場では使わないと思っていましたが、まさかのドラマを生んでくれました。
念のため持ってきて良かった~
(念には念を入れたトップロープ支点)
気を取り直して登攀準備に移ります。
前回の調査で必要装備と登攀プランは絞れていたので、スムーズに準備。
勿論、安全性を考慮しトップロープでの登攀です。
先ずは、リーダーが味見に向かいます。
高さは10~12mくらい、どっかぶりのオーバーハングが印象的ですね。
ロワーダウンで降下してゆきます。
「難し楽し~(笑)」と笑みを浮かべながら登攀中のゴリーダー。
オーバーハング越えの様子。
すんなりとクリアしてしまったゴリーダー。
ゴリーダーは「コレは楽しい!」と大満足の様子。
次のマチャアキ隊員は、登攀の期待が高まり過ぎて下腹部がソワソワしていたのはここだけの秘密です。
性状は、ガリガリ君の様な少し脆い氷で直線的に打ち込んでもアックスの刺さりが直ぐに緩み抜けてしまう。斜め気味にアックスを打ち込んで、重心を左右に振りながら素早く切り抜けるのがポイントでした。これは、リードなんてとても無理ですね(笑)
乗り越しのオーバーハングを登攀中の様子。
最後はリーチとパワーで押し切ったマチャアキ隊員。
ってか、マジで楽しかったです「一ノ倉沢クレバス」登攀。
コレは、やる価値ありありですね。危険因子ばかりのフィールドですが…
続いて、ラスト隊長。
「う~ん、登れるかなぁ…」
なんて言っていましたが、すんなり登っていました。
オーバーハングに差し掛かると…な、なんと!
フィギュア4をかましてきました!臨機応変な状況判断、流石でした。
ゴリーダーが、その発想に「なんだってぇぇ!」と叫んでいましたね(笑)
「足、決まんねぇからフィギュア4した。」と何事もなかった様子。
チキショー!格好よすぎるだろ隊長!またまた、隊長の株価が上がってしまいましたね。まいった。
一人一本終えたところで、奥の雪渓から妙な音が聞こえたりと異様な雰囲気が漂ってきたので、危険と判断し、ここで撤収・離脱としました。
ささっと「ウェーイ👍」と記念撮影して、素早く撤収・離脱します。
懸垂支点を作成し、マチャアキ隊員が先行降下、次の懸垂支点を作成し、続いてゴリーダーに降下してもらいました。隊長には殿(しんがり)を務めていただきました。
滝沢第三スラブが威風堂々と構えていました。ここは次なる目標ですね、冬期ですけど。
第1離脱用支点を回収しクライムダウンする殿(しんがり)の隊長。
夏日予報であったのに雨雲が発生、押し寄せてきました。やはり、山は何が起こるかわかりませんね。離脱の判断は正しかったようです。
安定地帯まで下りてきて、ふとゴリーダーを見ると何か妙なモノを手にしていました…
「仁王ストック」だとか…またか!
前回に続き現地調達の逸品、「仁王」感が漂う天からの贈り物でしたね。

しかし、次の瞬間には「仁王ストック」は無くなっていました…どこへ?

無事に、一ノ倉沢出会いまで戻ってきました。これにて任務達成です。

廣川健太郎の著書「新版アイスクライミング全国版」の最後の方のページ・富士山サミットフォールの一文に「谷川岳一ノ倉沢クレバスを除くともっとも遅い時期に登れるルート」 という記載があり、 たったこの一文から始まったプロジェクト。

こんな、不確定要素しかない、クライミングが成り立つのかも分からない、そもそもクレバス自体が何処に存在するかも分からない状況で、有力な情報すらなかった「一ノ倉沢クレバス」でのアイスクライミングこそ、正に「冒険」。私は、これこそが山の本質を突くような山行だとも改めて感じました。

先人たちはこうやって、このような不確定要素の「冒険」を楽しみながら、己の知識・技術を磨き、更なる高みへと向かっていったのでしょうね。

それこそが「アルピニズム」なのでしょう。

その精神性を敬服するとともに、見習って行ければと思う所存でございます。

まぁ先人たちのように、厳冬期の岩壁を素手で登るとか、食料は飴のみで数時間の厳冬期登攀に耐える、とかなんて事は流石にやりたくはないですが…

アルピニズムを代表するこの地で改めた感じたこの思いは、今後の我々の活動の大いなる糧となったに違いないと思います。今後も、真面目に、何だか訳の分からないこともやりつつ、楽しみながら「冒険」を続けていければと思いますね。

冒険は続く…

(追伸)

無事に任務を達成し安堵感に浸っていると、隊長の独壇お絵描き劇場「キン肉マン布教活動」が勃発しました。

なんでも、今回のテーマは「ロビンマスク」だとか…

最終的にはこっちの布教活動の方が白熱してしまい、今日は何しに来たのかわからなくなっていました。あれだけ期待や希望に満ちていた「一ノ倉沢クレバス」登攀も、隊長の「キン肉マン布教活動」の面白さには霞んでしまいました。流石です、隊長(笑)

「ここじゃ、上手く書けねぇ~」
「この苔はかたい…」
「ここもダメだなぁ…」
「ここはイケるか?」
そんなこんなで、行きついた場所はベースプラザ駐車場でした。
もう、帰ってきちゃってるやんけ。帰り道はずっとこんな感じでした(笑)
力作「ロビンマスク」
いやはや、メッチャ上手い(笑)