「一ノ倉沢クレバス」は実在するのか!?
- 2022.07.06
- アイスクライミング アルパインクライミング
- 一の倉沢クレバス, 谷川岳


【フィールド情報】
群馬県利根郡みなかみ町 谷川岳一ノ倉
「一ノ倉沢クレバス」
グレード:???
※全てにおいて情報は不明。廣川健太郎の著書「新版アイスクライミング全国版」富士山サミットフォールの一文に「谷川岳一ノ倉沢クレバスを除くともっとも遅い時期に登れるルート」 という記載がある程度。
【活動記録】
令和4年6月6日(月)
天候:少雨
気温:10℃以下
メンバー:隊長(吉田)、ゴリーダー(橋本)、まちゃあき(Zaki)
奥多摩・奥秩父アックス登攀部隊の通称「部活」
廣川健太郎の著書「新版アイスクライミング全国版」の最後の方のページ・富士山サミットフォールの一文に「谷川岳一ノ倉沢クレバスを除くともっとも遅い時期に登れるルート」 という記載があるんです。 たったこの一文から始まったプロジェクト。
どうかしてますね、この人達。
どんなものなのか、フィールドの何処にあるかもわからない、本当に実在するかの確証もない、またそんな場所で「アイスクライミング」なんてできるかもわからない、できたとしても安全の保障は1mmもない…
こんな不確定要素しかない事を楽しんでいたりする我々です。KA-NA-RI バグってます。

との隊長の一言で行くことに。なんだかんだ、行く他の奴らもだいぶイっちゃってる。

ホントに行きます?(実は、結構バックギアでしたw)
そもそも登山計画書を提出した時点で、「この時期に谷川岳の危険地区に【雪渓調査】と題して一ノ倉沢にいくやつがいるのか?」と登山指導センターを困惑させてしまったのは否めませんが…
当日は、ガッツリ雨。
登山指導センターを通過する時、正直「引き留めてくんねぇかなぁ…」と思ったのはここだけの秘密。

隊長:「おいおい、引き留めねーのかよぉ~w」「仕事しろよぉ~」
マチャアキ:「…www(失笑)」
二人で爆笑。現実は残酷でした。
※ゴリーダーは歩行に難ある為、少し遅れています。
まぁ、自業自得ですね。
逆に、ここで吹っ切れて「なら、やってやるよ!」という気持ちになれたのも事実です(笑)
一ノ倉までのアプローチは徒歩ですが、帰りの時間短縮を考えてチャリを持参。
いつもチャリ様様な我々です。
一ノ倉バス停までは各々のペースで向かいます。
先についた隊長とマチャアキが、後ろからきているであろうゴリーダー様子を見に行くと…
便所から上裸の人が出てきました。

迷わず「110番」をチョイスしましたが、ここは電波が繋がらず…
「くっ、かくなる上は対峙か…」
と思ったら、ゴリーダーでした(笑)
冗談はさておき、ここで準備を整えて一ノ倉沢に向かいます。

一ノ倉沢に入るところで雪渓の雪壁が出現。「アイスクライミング最~高!」と楽しむゴリーダー。
そんな姿を見れて隊長とマチャアキも微笑ましい。ってかこんな事やってる奴は我々しかいないわw

やはり、雪渓がある時期の一ノ倉沢はアプローチは容易いですね。出合いから1時間もかからない程度でテールリッジ付近まで来てしまいました。しかし、ゴリーダーにとってはやはりアプローチ核心。
自分のペースでじりじりと上がってきますが、その姿には感服です。

遠目から目視で「クレバスはアレなんじゃねぇか…?」と目星はつけていましたが、ようやく何か可能性が匂う雰囲気になってきました。

隊長:「あれ、怪しくねぇ?」
「でも、こっちにも小っちゃいのあるでw」
テールリッジの左側付近に空いたシュルントが雪壁になっていました。
リーダーを待っている間にちゃっかり遊びました。



どんな状況でも「笑い」を絶やさない陽気な野郎たち。
でもこれが、過酷な状況でも精神安定剤にもなるんですね。いつもありがとうございます、隊長。

いったん、ゴリーダーも合流し作戦会議。
隊長:「アレ、見てみ。多分アレやろ。」
マチャアキ:「ですね、行ける所まで行きますぅ?」
ゴリーダー:「だな、安全第一で行ける所まで行こう。」
とりあえず「本谷を進んで行ける所まで・観察できるところまで行って見よう」との事で一致し本谷を進みます。
ここからは、雪渓も傾斜が強まっていき、ゴリーダーには少しキツイご様子。
ですが、流石ゴリーダー。勿論、這い上がってきます。

滝沢にさしかかった頃、怪しい割れ目たちが見えてきました。
とりあえず、機動力のあるマチャアキが先行し、周囲の状況確認と実体を確認しに行きます。
しばらくすると、歓喜の声が…

ついに、「一ノ倉沢クレバス」の実体を間近で捕らえました。
やはり、予想していた通り、一ノ倉沢本谷・滝沢付近にクレバスはありました。
雪渓崩落に気を付けながら、調査を開始します。



滝沢寄りまで近づくと、かなりのオーバーハング部分を確認。御満悦な隊長。
長居も危険なので、スピーディーに調査し離脱します。
残念ながら、ゴリーダーは怪我の関係もありクレバス直近まで来ることはできませんでしたが、一ノ倉沢クレバス発見の喜びと登攀の可能性が見えたことが共有できて、満足な様子でした。
目的は達成できたので、離脱に移ります。
スノーバーとダブルアックスで支点構築し、ゴリーダーはFixロープで懸垂降下。
1人は支点で待機・降下終了後に支点回収・離脱、1人は降下点まで同伴・次の支点構築、の繰り返しでスピーディーに離脱します。


ヒョングリ滝付近までくれば傾斜は落ち着いてくるので、そこからは自力下山へと移ります。

その後は、ゴリーダーは現地調達で強力な武器を手に入れ軽快に下山していました。
何事もなく、無事に下山できてなによりですね。

一ノ倉沢出合いにまで戻り、装備を解除、そこからはチャリで高速帰還。
やはりチャリは最高です、15~20分くらいでベースプラザに戻れてしまいます。
何はともあれ、「一ノ倉沢クレバス」の実体確認、必要装備の見直し、登攀の可能性の発見など大収穫の1日でしたね。
最初はバックギアだったものの、登山指導センターの人の無言の激励(?)があったおかげで、無事に任務を完遂し、次に繋げることができました。
さぁ、次はいよいよ登攀、一ノ倉沢クレバス・アイスクライミングです。
果たして。今シーズン行けるか…
冒険は続く。
(追伸)
希望と期待で胸いっぱいななった隊員たちは身体の冷えを癒すため、先ずは温泉に行き、その後お腹を満たして帰還しました。

